「山本!」

「おー、ツナァ、無事か?」

「うん」

「てめぇの方はどうだったんだよ? ちゃんと蹴散らしてきたんだろうな?」

「追っかけてはこられねー程度にな」

「上出来だぜ」

「さて、じゃー、いよいよ最終ボスとご対面といこうじゃーねーか!」

「緊張感ないね、山本」

「そーかぁ?」

「十代目、こいつは昔からそうでしたよ」

「うーん……、そういえばそうだったかな」

「えー、だってさー」

「あんだよ」

「今回はツナも獄寺も一緒だと思うとさ、すんげー楽しくってさあ」

「あの、おまえ、分かってんのか? これから、この建物なか入ってって、人数もわかんねー相手、ぶちのめしてくんだぞ? 頭、わいてんのか?」

「そういう獄寺だって、ずーっとにやにやしっぱなしじゃねーか」

「馬鹿野郎! これは戦闘のせいで気分が高揚してっからであって、てめーと同じ理由な訳ねえ!」

「あはは、もう、なんだか……。全然、怖いって思えなくなってきた」

「だろー? いやー、ほんと、久々に本気出しちまいそうだ」

「てめぇ、調子にのって相手殺すんじゃねぇからな! 十代目が悲しまれるから!」

「りょーかい、了解! そんじゃあ、特効隊長さん、どーぞどーぞ。突破口作ってくださいなー」

「……ヘラヘラしてっと一緒に爆破してやっぞ、このクソ野郎」

「まぁまぁ、獄寺くん。あんまりモタモタしてると逃げちゃうかもしれないから、そろそろ突入しよう?」

「十代目がそう仰るのなら!」


 右前方に、刀を手にした山本が笑っている。
 左前方に、煙草をくわえた獄寺が口元に微笑をのせる。
 
 中央に立っていた綱吉は、彼らと視線をあわせて、グローブをはめた両手を広げる。



「準備はいいかい、マイ・トイ・ソルジャー」





 山本はくるりと刀を器用に手の甲を使って回転させたあと、両手で刀を掴んだ。

「オーケィ、ボス」

「あなたのお望みのままに――」


 獄寺は綱吉に頷いて、懐からだしたダイナマイトを口元の煙草の火で着火して前方の倉庫の入り口に投げつける。


 爆音と共に、数メートル先の倉庫の扉が回転しながら吹っ飛んでいく。


 舞い上がる土煙と飛び散る扉の残骸の中へ、山本が獰猛な笑みを浮かべながら突入する。

 続いて獄寺がダイナマイトを両手にたずさえて走り込んでいった。


 綱吉は、額と両手に炎を宿しながら、ゆっくりと、ゆっくりと。


 修羅の道を進んでいった。


『三人にしかない絆と信頼と感情、結ばれた縁は途切れることはなく。平穏な午後に響く爆音と血と悲鳴と――天へ昇る浄化の炎……』