「はあぁああ……」

「十代目、どうかなさったんですか?」

「獄寺くんはいいなあ」

「はい?」

「テストだよ、テスト! あー、もう最悪だよー、リボーンに殺されちゃう……っ。っていうか、獄寺くんにも教えてもらったのに、こんなに出来が悪いなんてもう……ほんと、ごめん」

「そんな! 謝らないでください!! この獄寺の教え方がいたらなかったばっかりに!! 十代目がリボーンさんにしぼられるなんて……! お、オレも一緒にリボーンさんの鉄拳制裁を受けます!」

「なに言ってるの?! 獄寺くんまで怒られなくたっていいよ!」

「いいえ! 右腕として、十代目だけを辛い目になんてあわせられませんから!」

「うう、なんでそんないい笑顔なのかな、獄寺くんは……」


「追試でどーにかなるって、あんま気にすんなよ、ツナ!」

「そういうてめぇも追試だろうが、山本武!!」

「ちぃっと野球で頑張りすぎてへとへとでな、授業中寝てたらやっべーことになっちまったよ」

「自業自得ってんだ!!」

「獄寺って、ほんとツナとオレに対する態度違うんなー。どこにスイッチあるん?」

「スイッチならここに――ってあるわけねえだろ!!!」

「おー。ノリつっこみ」

「……二人とも、楽しそうだね……」

「十代目! オレはこんな奴と楽しいことするくらいなら、十代目と辛いことをご一緒するほうが何倍も幸せです!」

「拳を握ってまで、主張することじゃないよね、それ」

「まーまー、ツナ。そんなに悩んでても、とっちまったもんはしゃーないさ。次回、頑張りゃいいことだろ? な? 一緒に追試の勉強しようぜ」

「や、やまもとー……」

「よしよし」

「ふぬあー!! こんの野球馬鹿め! よ、よくも十代目の愛らしい頭頂部を撫でくり回しやがって!!」

「……獄寺くん、言い回しがおかしいよ」

「こんな馬鹿と勉強したって仕方ありませんよ!! 勉強ならオレが教えてさしあげます!」

「あ、いいなー。オレもついでに教えてくんね?」

「ハッ、一昨日きやが――」
「獄寺くん」
「はいっ」
「三人で勉強しよう?」

「……は、い……。――うっ」


「なんで獄寺泣きそうなん?」

「……まあ、うん……。あえて触れない方向で」

「よぉし! こうなったら追試で満点とりましょう! ね、十代目!」

「ま、満点! できるかなあ」

「丁寧に教えますから、分からなかったらいってくださいね」

「おー、獄寺、先生みてーだなァ」

「……先生……。――十代目、お、オレのことを――」

「呼ばないよ」


「……うっ……」

「なあ、ツナ。なんで、獄寺のやつ、明後日の方向を仰いで涙こらえてんだ?」


「……山本はわからなくていいよ、そのままの山本で、いて」


『秀才と野球一筋と落ちこぼれ、夕暮れの教室で黄昏れ勉強会』