「沢田! ちょっといいか?」

「え、あ、了平さん、どうかしたんですか?」

「ランボを見なかったか?」

「え、ランボですか? いいえ、みてませんけど――どうかしたんですか?」

「いや、今朝な、うっかりランボの牛乳を間違って飲んでしまってな。泣かれてしまったから代わりの牛乳とケーキを買ってきたんだ、謝りたいんだが見あたらなくってな」

「……ああ、そうだったんですか」

「……そう、だった?」

「ランボ、でておいで。了平さん、謝りたいって」


「………………」

「やっぱりかくれんぼしてるだなんて嘘だったな、ランボ」

「だって……」

「なんだ、意図的に隠れていたのか。では探しても見つからないわけだ。――すまない、ランボ。おまえの牛乳だとは知らずに飲んでしまって! 同じ牛乳と、前に沢田が美味いと言っていたケーキ屋の菓子も買ってきた。遠慮せずに食ってくれ」

「あの、……了平さん、牛乳いっきに五瓶ももらっても、ランボおなか壊しちゃいますよ」

「ぬ! そうか、それはすまない」

「いいえ! あ、ありがとうございます。お兄さん。おれ、牛乳好きなんで嬉しいです!」

「いや、本当にすまなかった! 俺が悪かったんだ。次回からは気をつける」

「よかったね、ランボ」

「……あのう、よかったら、ケーキ、ボンゴレとお兄さんも一緒に食べませんか? おれ一人じゃ食べきれませんから」

「関係ないオレもいいの?」

「おれのこと、匿ってくださったじゃないですか」

「了平さん、いいですか?」

「ああ、沢田も仕事を頑張っているからな! ご褒美だな」

「わーい、ますます漁夫の利って感じ! ランボ、箱あけて、箱!」

「はいっ――、わあ、七個も入ってますよ!」

「どれを買って良いかわらなくてな。おすすめをつめてもらったんだ」

「うー! ここのティラミス絶品なんだよ! ランボ、食べてご覧!」

「はいっ、じゃあ、ボンゴレのおすすめをいただきます。お兄さんは?」

「俺はそうだな――、ガトーショコラをもらおう」

「じゃあオレはレアチーズケーキもらおうっと!」

「これ、スプーンです。どうぞ」
「ありがとランボ」
「すまない」


「ふふー、美味しそう! いただきまっす!」
「いただきます」
「ケーキなんて久方ぶりだ! いただきます」

「ぬ! これは美味い!!」
「おいしい!」
「でしょう、でしょう!! あー、しあわせー……、なみだでそう……」


『食べ物の恨みは食べ物で報いるべし、お菓子に夢中な子供な大人達の午後三時』