「あー、今日も一日、オツカレサマ! 自分!」

「――おい、自分だけか?」

「あ、いや。……リボーンもお疲れさまデシタ」

「フン……。風呂上がりに日本製のビールだなんて年とったな、おまえ」

「人をおっさんみたいに言うな! ささいなアルコールで、仕事の疲れを癒してんだから、ほっとけっての」

「ちょっとよこせ」

「え、こら! もう……、自分で新しいのあけろよ、キッチンの冷蔵庫に入ってんだからぁ」

「……不味い。よくもこんな不味い麦酒飲むな」

「そりゃ、ワインを生命の水と言わんばかりに飲んでるおまえにとっちゃ、ビールは口にあわないだろうけど――」

「今度、オレが美味い酒を出すバーに連れていってやるよ」

「なに言ってんの、未成年」

「馬鹿か? オレはおまえがガキのころから、バーになんて飽きるほど通ってんだ。ナメんなよ」

「……いったい、おまえ、いくつなんだよ?」

「年齢なんて些末なことに意味はねぇ。そうだろ、ダーリン?」

「ぷ、あはは! そうだろうね。おまえに年齢なんてこと、関係ないだろうね」

「ついでに言えば、性別にだって意味はねーな」

「え、なに、オレ、今から寝るんですけど」

「なんかむらむらしたから、やらせろ」

「阿呆か! いったい、今の会話のなかのどこにむらむらする要素があったってんだ!?」

「アルコールに酔ってるおまえの顔にむらむらしたんだ」

「正直に言われたって困るっての! オレは今日一日疲れたの! このビール飲み終わったら寝るんです! 明日も忙しいんだから!」

「つれねーこと言うな、ダーリン」

「カワイコぶってもだめ! 強引にことにおよんだら、一ヶ月は禁欲してもらうからね!?」

「ハン! おまえが一ヶ月もオレを禁欲できるとは思えねーがな」

「え、なに、その鼻で笑う態度! ちくしょ!」

「ちゅーしろよ、ダーリン」

「……やだ」

「しろ。ちゅーしたら、我慢してやる」

「チューだけで終わらない気がするから、やだ」

「早くちゅーしねーと、ぐっちゃぐっちゃにするぞ」

「ぐっちゃぐちゃ!? なにそれ、コワッ! ――あーもう! 分かったよ、しますよ、しますから、ぐっちょぐちょだけはよしてください……ッ」

「素直な方が可愛いぜ、ダーリン」

「……ハア……。オレはいつだって、おまえに逆らえた試しがないよ……、ハニィ」


『どこまでも強引な殺し屋とそれに振り回されることに慣れてしまっているボスの宵の淵』