「なぁなぁ、ツナ、あれってなにしてんだ?」

「え、ああ、プリクラですか? えっと、あの機械の中で写真を撮って、その写真にいろいろ落書きしたりしたあと、それが小さなシールになって出てくるんですよ」

「証明写真みてぇなもん?」

「や、そんな真面目なものじゃなくて、もっと……なんていうんだろう、気軽に撮るものなんですよ。日本のゲームセンターには必ずあるメジャーな機械なんです。撮ったプリクラ写真は、友達と交換したりするんですよ」

「へえ、じゃあ、ツナも撮ったことあんだ?」

「はい。獄寺くんと山本と遊びいったとき、撮ったことありますよ」

「なぁ、じゃあ、俺もツナと撮りてぇな。駄目か?」

「駄目ってことはないですよ、俺でよければ一緒に撮りますよ。――えっと、あの機械なら空いてるみたいですね……」




「おー、ツナ、手慣れてんなー」

「え、いや、オレもそんな撮ってる方じゃないですよ? シャッター自動に設定したんで、コンピュータがカウントダウンするたびに写真撮られる感じになりますから――カメラここです」

「オッケィオッケィ。じゃ、最初は普通にピース」
「あはは、ええ、ピースで」

3,2,1

「おっ、フラッシュなんてつくんだな」
「ほらほら、すぐですよ」

3,2,1……

「ぎゃ、俺、目ぇつぶったかも」
「オレもよくやります、半目とか最悪ですよね」

3,2,

「どうせならアップとかどうだ?」
「え、あ、ディーノさん、顔、近い」

     1……

「なに、照れてんだよ」
「ディーノさん、スキンシップしすぎ――」
「肩組むくらいで何赤くなってんだよ」

3,

「ツナ」


2,

「え」


1……


「――んむ……ッ、ぷ、は! ディーノさん!!」
「あはは、わりぃわりぃ」
「なにするんですかっ!?」
「赤くなったツナ可愛くて、ちゅーしちゃった」
「しちゃった、じゃないでしょう!」

3,

「愛してるよ、ツナ」

2,

「……信じ、らんない!」

「おいで」

「……ッ……!」

1……




「え、なに、移動すんの、なにすんの?」

「こっち、来てください。さっき撮った写真にらくがきするんです……」

「え、ツナ、なんか怒ってる?」

「怒りたいんですが、あんまりにもディーノさんが喜んでるんで、もう、呆れるというか、なんというか……」

「うん?」

「……とにかく、らくがきしましょう。これで書いてください。スタンプとかラインとかいろいろあるんで、……あとは適当に書いてみてください」

「へえ、すげえな、いまのアミューズメント機械は。あ、ちゃんとキスしてんのも、抱き合ってんのも綺麗に撮れてんな! すげー」

「……もう、いたたまれない……」

「ん、なんか言ったか?」

「……なにも」




「お、でてきた、でてきた!」

「……よかったですね……」

「テンション下がってんな、ツナ。やっぱ怒ってる?」

「怒ってませんけど、……複雑な気持ちなんです」

「なんで?」

「……自分のキスシーンが写真になるなんて、もう、恥ずかしいのと照れくさいのとでグルグルしてるんですよ」

「キスくらい、どーってことないだろ?」

「オレ、日本人なんで、キスの文化ないんですよ」

「初々しいなぁ、ツナは……! にしても、よく撮れてんなあ! こんないいもんあるんだったら、もっと前から利用すりゃよかったぜ!」

「それ、全部あげますよ」

「え、同じ写真何枚かあるから、分け合うもんじゃねえのか?」」

「うちって不特定多数の人間が出入り自由なんで、そのプリクラ持ってたりしたら、ふとしたはずみで誰かに見られそうで恐いんですよ……っていうか、ディーノさんも、それ、絶対に、絶対に! 誰にも見られないようにしてくださいよ!?」

「いや、だって、さっきツナ言ってただろ? このシール、みんなで交換したりするんだって。獄寺とか山本にやればいいだろう?」

「み、見せられる訳ないでしょう!?」

「ははは、照れ屋だなあ、ツナは」

「――それを獄寺くんや山本に見せようとするディーノさんが、強者すぎます……」

「恋人同士がチューして写真とってなにが悪いんだ?」

「……ああ、もう……」

「ふふふ、いちいち照れるなよ。可愛いなあ、ツナは」

「……もう、いろいろ、勘弁してくださいよォ……」


『持ち前の美貌に微笑を浮かべるドン・キャバッローネと赤面した顔で情けない声をあげるドン・ボンゴレ――帰宅途中にゲーセンにて寄り道』