「……雲雀さん、なんです、これ……」

「薔薇」

「えっと、はい、薔薇なのは分かるんですけど、この、見るからに何十本って感じの量はいったい……」

「もらった」

「……誰にですか?」

「知らない女」

「…………」

「いらないから綱吉にあげる。ここに飾っておけば?」

「いや、いらないとか、そういう問題じゃなくて、で、その女の人はどうしたんです?」

「さあ? 仕事があるから相手なんてしなかったけど」

「――雲雀さん、それ、プレゼントなんじゃないんですか?」

「僕、こんなもの欲しいなんて思ってないよ」

「いや、はい、雲雀さんが花になんて興味ないのは分かってるんですけどね。たぶん、赤い薔薇だし、なんていうか、好きです、ってことなんじゃないんですか?」

「知らない女だったよ?」

「雲雀さんのことを見かけて、ずっと思ってたんじゃないんですか?」

「ふぅん」

「――昔の雲雀さんだったら、きっと知らない人の花束なんて受け取ったりしなかったでしょうね。優しくなりましたね、雲雀さん」

「僕はね、綱吉。知らない女に優しくなんてするつもりないけど?」

「え、……でも、花束受け取って――」

「綱吉にあげたら喜ぶかと思ってもらっただけ」

「……ひ、雲雀さん、それは……なんていうか……」

「いらないなら捨てるけど?」

「ちょ、いや、駄目ですって! 捨てないでくださいよ! 飾っておくんで、ください!」

「はい」

「……雲雀さんがひどすぎるけど、花、花には、罪はない、はず……」

「なにか言った?」

「イイエ……。え、なんですか? 携帯なんて出して――って!」

 パシャリ

「薔薇の花束と綱吉の組み合わせなんて珍しいから待ち受けにしとくよ」

「しとくよ、じゃないですよっ!! こんな薔薇の花束抱えてだなんて、どこの少女漫画ですか!? 消してください、恥ずかしい!」

「うん、よくとれてる。じゃあね」

「雲雀さんっ!! ちょ、なにげに平然と立ち去ろうとしてんですかっ! 待ってくださいっ!!!」

「これでいつも綱吉と一緒だ」

「後生ですからぁあ! それだけは勘弁してください! 誰かに見られたらオレどうしたらいいんですかっ!?」


『携帯片手に上機嫌の雲の守護者と恥ずかしさで悶絶して追いかけるボス、他愛のない午後』